メーカー本位の商品づくりから、ユーザーに主体性をおいた商品づくりへと転換しようという意欲は感じることができそうだ。
T自動車の二O世紀初頭における目標値は、シェアの四O%確保と国内での販売台数二五O万台である。
そして、全世界で六OO万台を販売するとともに、自動車に続く次ぐ一代事業を育成していくことを一九九八年の年頭所感でO社長は述べている。
いま、シェアがなかなか伸びないひとつの理由は、国内では若者向けの商品を矢継ぎ早に市場に投入しているH技研の元気のよきであり、もうひとつは一九九五、九六年あたりから非常に好調になってきた外車の影響という説がある。
ただ、一九九七年以降、外車の伸びはかなり落ちた。
だが、潜在的には『Tでなくてはならない』という、現在の中高年層の信奉してきた神話はもはや過去のものになっていることは事実だ。
こうした状況を打破すべく、T自動車が掲げたものはつぎの三つである。
技術開発力・商品開発力の強化。
一九九七年はT・エコプロジェクトのもとで、ハイブリッドカーフリウス』を市場に投入し、C02排出量の低減に向けた取り組みがスタートしたが、さらに一九九八年以降は、一般の、方ソリンエンジンの排出、ガス中に含まれる、C02やHC、NOXに関して二OOO年に施行予定の規制に先行して、現在の規制値の七O%以上を低減したクルマを順次、市場に導入して行く。
それとともにVVCの目的と重なる需要創造型の商品開発を進めて行く。
圏内販売の強化・充実。
当然ながら、シェア四O%の達成と二五O万台の販売のために、を改訂して、新たなパートナーシップを確立する。
海外展開。
アメリカ、インディアナのトラック工場、ウエストパ10シニアのエンジン工場の生産開始、カナダ、イギリスの乗用車工場の増強などのプロジェクトの推進、各地域の現地生産化を拡充するとともに、一九九七年に発表したヨーロッパ(フランス)の新工場、インドにおける合弁一事業などの新規プロジェクトの具体化を進めて行く。
エコ・プロジェクトやVVCの活動は、自動車の世界市場が単一的なものに変わりつつあるなかで、リーダーカンパニーとしての地歩を創造するためにも必要不可欠なものという巧仙識が読み取れる。
C02排出低減を売り要素にしたクルマをいちはやく市場に送り出したことに加えて、昨年秋の東京モーターショ−に出品した、メタノール改質方式によるFC(燃料電池)も注目を浴びた。
それは、来日したドイツのD社(メルセデスベンツのメーカー)の首脳も、T自動車の技術を高く評価し、自分たちのところよりも進んでいる、と表明していることてもわかる。
いずれにしても、新しい技術によるクルマを一日でもはやく世界市場に投入することが急務、ということは明らかなのだ。
ハイブリッドシステムがついに実現『プリウス』が誕生するまで一九九七年秋、日本の自動車史に大きな足跡を刻む新しいクルマが誕生した。
その名はプリウス。
T自動車が総力を挙げて開発を進め、世界で初めて市販することになったハイブリッドエンジン搭載の乗用車である。
画期的な省燃費と低公害性能を備えたこの商品は、いかにして誕生したのだろうか。
ハイブリッドシステムとは何だろうか。
それは、複数のまったく異なる動力源を備え、それぞれ組み合わせて自動車を走らせる機構のことだ。
ハイブリッドとは、複合の意味であるが、一般的には、万ソリンエンジンと電気モーターとの組み合わせたものを指すことが多い。
ガソリンエンジンとそれ以外の動力源とを複合的に組み合わせることによって、ガソリンエンジンのもつ欠点を補おうとする研究は、これまで世界中のメーカーや、学者・研究者によって行われてきた。
電気モーター、とくに底流の直巻モーターの特性は、回転が低いときに強い回転力(トルク)を発生し、回転が高まって行くにしたがってトルクは小さくなる。
これは、重量のある物体を加速して行くのに非常に都合のいい特性でエネルギー的にも効率的だ。
いつぽう、ガソリンエンジンは一定の回転域まで上げて運転しないと、大きな出力・トルクは発生しない。
エンジンによってもっとも効率的な回転数は決まっているため、その回転域で回し続けるなら例必貿が良くなるが、自動車のように発進、加速、一定速、そして減速というような使いかたでは、エネルギー効率は悪くなってしまう。
そこで、ガソリンエンジンを一定の回転較で回し続け、その力で発電機を駆動して電気エネルギーとして蓄積しておき、自動車を走らせるためにはその電気をモーターに供給してやれば、ガソリンエンジンで直接自動車を走らせるよりも、ずっと効率的かつ滑らかな加速・減速が行えるわけだ。
電気のみで自動車を走らせようとすると、ェネルギーを蓄積するために不可欠なバッテリー(二次電池H充電可能な電池を指す)は非常に大きなものを必要とする。
昔ながらの鉛電池は、なにしろ比重の大きな鉛と、取扱いの難しい劇物の硫酸を電解液に使うという難点がある。
それでいて蓄えられる電気エネルギーの量は、あまり多くなにしたがって、鉛電池を使用した電気自動車では、床下やトランクなどの空間に電池をいっぱい搭載しなければならない。
しかもメンテナンスも面倒であり、充電には非常に時間を要するのだ。
だが、ハイブリッド方式であれば、バッテリーは一時的に電気を蓄えるだけの機能なので、それは大きなものは不要となる利点がある。
ただし、鉛電池を使うのではやはり重くなってしまう。
効率的で使いやすいハイブリッドシステムにするためには、鉛電池よりも軽量でメンテナンスフリーのものが必要になる。
このように、システムとしては優れていることは昔からわかっていたが、適切な電池がなかったことや、機構が複雑なため実用とするには、信頼性やコストの点で難しい、というのがハイブリッドへの評価であった。
だが、Tはそれらの難間をひとつひとつ解決していった。
とりわけ、ニッケルと水素を使用した二次電池の完成が、ハイブリッドシステムを実用化させた大きな原動力になったのだった。
この電池は、M電池側とTとの合弁で設立した会社で、開発・生産を行うことになったのだが、いずれにしてもこの動力システムを搭載した市販乗用車を発売するまでの経緯は、決して滑らかな道程ではなかった。
新型車開発部門を組織改革プリウス開発リーダーであった第二開発センター、製品企画部門のチ−フエンジニア、Uはこのプロジェクトの立ち上がりについてこう語っている。
コ二世紀の自動車はどうすべきか?Tとしては何を柱にして新しい時代に対応すべきか?といったテ−マで、かなり長期的なビジョンの策定の動きがありました。
それが一九九三(平成五)年の春ごろのことだったと思います。
具体的なことはなにも一不されませんでしたが、ともかくその準備に掛かれという指令が発せられたんです」発案者がだれ、であったか?UによればT誉会長あたりだろう、とのことである。
まさしく、このプロジェクトはトップダウンそのものであった。
命令は、当時技術管理部長、であったK(現・T車体制副社長)に下った。
久保地は長い間製品企画室にいて、スープラやセリカ/カリ−ナなどの開発責任者を務めたあと、役員に就任して技術部門を統括する立場に転じた直後のことであった。
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